ユング心理学を大胆に発展させた画期的な心理療法「プロセスワーク」の基本概念と手法を解説しながら、家族・カップルを対象にその実際的な応用法を示した、プロセス指向心理学を学ぶための基本図書です。(原書初版刊行は1987年)
動作や姿勢、声の調子、言いよどんだ言葉といった身体的なサイン、夢、さらには周囲の出来事も、心の深層に広がる「ドリーミング」=個人の意識を超えた叡知の世界を反映しており、それらに対する気づきの力を高めることで、人間関係の問題を解明するのに利用することができる、とミンデル博士は言います。
たとえばあるカップルにとって、十数年前、結婚式会場に向かう途中で遭遇した火災事故は、現在の二人の関係を暗示するものでした。本書中の臨床例を読むだけでも、人生の複雑さ、深さに感動を覚えることでしょう。
本書のユニークさは、人間関係における諸問題を扱うに際して、個人の内面だけを対象にする従来の心理学的療法だけでなく、「夢」次元を取り扱うシャーマン的手法および、身体的側面からアプローチするボディワーク、さらにはホログラム理論、量子物理学などの知見をも視野に入れて、生のさまざまなレベルを対象にしている点にあります。
また、個人的な問題だけでなく、共同体、国家、地球規模の問題にまで気づきを広げていこうというその姿勢は、心理学の枠を越えて、21世紀におけるひとつの「生きる態度」であるとも言えるでしょう。そこに一貫して流れているのは、個々人の意識状態が全体に影響を及ぼし、また、全体が個に影響を与えるという、非常に東洋的であるとともに、量子論においても共有されている世界観なのです。
*プロセス指向心理学(POP=Process Oriented Psychology)とは?
1970年代、当時ユング派の分析家であったアーノルド・ミンデルによって開発された心理学。「出来事の原因を見つけて取り除く」のではなく「起こっている出来事には意味や目的がある」という観点から、自分の身体や環境に現れる微細なプロセス(なにげない出来事や感覚)に対する自覚を高め、そのプロセスを無理に変えようとするのではなく、受け入れ、その感覚が変容していく道筋にしたがっていくことで、問題の解決を見いだそうとする非常に東洋的なアプローチである。個人や人間関係に限らず、グループ、昏睡状態の人とのワーク、いわゆる精神病状態の人とのワーク、依存症の人とのワークなど幅広い分野を扱っており、最近は、コソボやパレスチナ、インドなど紛争地区における民族間の対立などもワークショップ(「ワールドワーク」という)の対象に取り上げ、大きな成果をあげている。
【目次】
第1章 ドリームボディの言葉
第2章 家族研究の展望
第3章 コミュニケーション・プロセスの因果論的側面
第4章 コミュニケーションの構造
第5章 チャンネルとシグナル
第6章 エッジ
第7章 家族のシグナル
第8章 カップルとのワーク
第9章 関係性における典型的プロセス
第10章 グローバル・ドリームボディ
第11章 セラピストの態度
第12章 地球心理学
第13章 質疑応答