本書は、これから赤ちゃんを産まれるお母さん、また、お子さんが生まれたばかりのお母さんにぜひお読みいただきたい、0歳児から3歳児までのお子さんの心をハッピーに、強く、元気に育てるための、科学的なアドバイスです。
「トラウマ」(心的外傷)という言葉はもともと心理学の用語でしたが、いまやポピュラーな日常語になっています。これは過去における心の傷のことで、災害や人生の大事件、家庭や学校で受けたいじめや虐待などがその原因です。
これらは子供があるていど大きくなってからの話ですが、じつは私たちの心が、すでにお母さんのお腹の中ににいるときからつくられているとしたら? だとすると、赤ちゃんが胎児期〜出産〜乳幼児期をどう過ごしたかが、その後の心の成長そして人生に大きな影響を与えているかもしれません。
本書の著者バーニー博士は、赤ちゃんが胎内にいる間から生まれた直後、そして2〜3歳までの環境が赤ちゃんのこころの成長にどんな影響を与えるのかを研究してきた「周産期心理学」の世界的権威。本書には、ベストセラーになった第1作『胎児は見ている』(祥伝社,82)以降の博士の20年来の研究成果が集大成されています。
博士がこの本でたくさんの科学的証拠をあげて語っているのは、
「妊娠中・出産時・出生後の赤ちゃんの脳(心)の発達に、お母さんの心の状態が驚くほど大きな影響を与えている」ということです。つまり赤ちゃんの心は、お母さんのこころを感じながら発達するということです。
そこからわかってきたことは、
●幸せなお母さんの脳からはエンドルフィンなどの幸せホルモンがたくさん分泌され、それは成長中の胎児の脳の「回路づくり」によい影響を与える
●反対に、家庭内や仕事での慢性的ストレスをかかえているお母さんの脳からはストレスホルモンが分泌され、胎児の脳に悪影響を与える。それは子どもが大きくなってからの人格にも影響するということです。
博士のアドバイスは本書の各章の「まとめ」と「育児のポイント」にたくさん紹介されていますが、そこからいくつかご紹介します。お子さんを幸せにするために役立つ知識がいっぱいです。
●0歳児教育よりも大切なのは、子どもを愛とやさしさで包んであげること。子どもが心から安心できる環境で成長できれば、子どもの脳の学習能力は自然に伸びていく。
●胎児のころから子どもに愛情をもって話しかけてあげよう。お腹の赤ちゃんには人間のすべての感覚・意識・記憶力・感情がすでにそなわっている。(その体験を後年「胎内記憶」として思い出すのです)
●お母さんの「しあわせ脳」とつながって誕生し、成長した赤ちゃんは、よく食べよく眠り、めったに泣かない。
●誕生は、温かく心地よい子宮からいきなり寒くて騒々しい外界への移行。病院での医療的処置の痛みは、小さな赤ちゃんには大人の何倍もの苦痛となる。バーストラウマ(誕生時のトラウマ)をなるべく作らないように、できるだけソフトでやさしい、自然なお産のスタイルを選ぼう。
●お母さんが外で働くためには「0歳児保育」は便利かもしれないが、子どものしあわせな成長と人格形成のためには、心理学的に見て最低2年間はできるだけ子どもと一緒に過ごすことが望ましい。その体験は、子どもが大きくなって社会生活をしていくうえでの大切な基盤になる。
赤ちゃんの「胎内記憶」の研究で有名な池川明先生(池川クリニック院長、『おなかの中から始める子育て』〔サンマーク出版〕著者)は、本書の内容に大きな共感を持たれ、まえがきをお寄せ下さり、ご講演などでご紹介して下さっています。
池川クリニック>> http://www1.seaple.icc.ne.jp/aikegawa/
赤ちゃん自身から見た、妊娠・出産・育児のベストな姿って何だろう?――その答えが本書にはあるのではないでしょうか。