「キャアッ、ゴキブリよ! はやく殺して!」 今日もそんなムゴい言葉が世界中の家庭で叫ばれていることと思います。
地球上にはいったいどれくらいの虫がいるのか、想像もつきません。アリだけでも、その総数は1京匹(1兆の1万倍)と言われています。そんな虫たちは、人の目のふれないところで非常に重要な働きをしており、彼らなしには地球の生態系は成り立ちません。
それなのに、なぜ虫は嫌われるのでしょう? あなたも、ハエ、蚊、ゴキブリなどは絶滅してもかまわない、と思っていませんか?
そうした心理は、本能的恐怖によるものではなく、近代社会が産んだ文化的偏見のひとつなのだ、と著者ジョアン・エリザベス・ロークは言います。その証拠に、子供たちは虫が大好きですし、スピリチュアルな存在として虫に敬意を払う文化は数多く存在します。たとえば、ホピ族の聖霊ココペリはアブの擬人化という説がありますし、西アフリカではカマキリは神と見なされています。また、ロシアやフランスの一部では、ゴキブリは家の守護として大事にされています。
本書には上に挙げた虫以外にも、クモ、コガネムシその他の甲虫類、テントウムシ、サソリ、シラミ、ノミ、トンボ、ミツバチ、蝶、蛾、カマキリ等が登場します。こうした身近な虫たちを、古来、人類は観察し、その能力に驚き、目に見えない大いなる世界の情報と叡知をもたらしてくれるメッセンジャーとして、受け入れ、共生してきたのです。
今こそ、私たちの昆虫観、昆虫との関係を見直し、改善すべき時。虫への愛にあふれた本書を読めば、あなたもきっと、不意にゴキブリが現れても、もはやあわてふためくことはなくなるはず。少なくとも、虫への敵意はかなり薄らぐことと思います。
【目次】
第1章 故郷へ
第2章 レンズの曇りをとる
第3章 魂の導き手としての虫
第4章 わが神、ハエの王よ
第5章 ビッグフライの助言
第6章 神がかった天才
第7章 アリに教えを請う
第8章 太陽の神々
第9章 蜂に語りかける
第10章 血の絆
第11章 運命の紡ぎ手
第12章 刺されることの意味
第13章 羽のある人々の王国
第14章 奇妙な天使
第15章 カマキリにならって